十二月の窓辺(ポトスライムの舟に収録)を読んで思い出すパワハラ体験

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「ポトスライムの舟」を図書館で借りて読んでみた。「ポトスライムの舟」には表題作のほかに「十二月の窓辺」という中篇が入っている。それを読んで思ったこと。

「十二月の窓辺」概要

ポトスライムの舟2

主人公の女性ツガワは、上司のX部長(女性)からひどいパワハラを受けている。会社にはかばってくれる先輩も、愚痴を言える同僚もいない。

会社の近くに通り魔が出没するとのことで、女性たちは班を作って帰っていくが、自分はその班にも入れない。同じ建物で働く別の会社の女性だけが、会社の不満をリアルタイムで伝えられる唯一の存在だ。

パワハラが続き、どんどん自分に自信がなくなっていくなか、近くのビルで女性が男性に暴力を受ける場面を見てしまう。そしてツガワは・・・

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過去のパワハラ経験

この主人公ほどひどくないが、私も過去にパワハラを受けたことがある。

以前、正社員で販売職をしていたときのことだ。あるお店で1年半ほど働いたあと、別の店舗に異動することになった。そこで働きはじめ、しばらく経ったある日、店長に呼ばれ、販売の仕事でこれまで何十人も見ているけれど、あなたほど仕事ができない人はいない、と言われたのだ。

なにか大きな失敗をしたわけでもないし、具体的なことを言うわけでもない。よくわけがわからず、とりあえず、はい、はい、と返事をするしかなかった。

あとでゆっくり考えてみると、確かに私は臨機応変な対応が苦手で、とっさに思考が固まってしまうことがある。そして取り立てて仕事ができるタイプではないこともわかっている。しかし、異動前のお店では問題なく働いていた。そこまで言われるほどひどいのだろうか?

百歩譲って、もし私がかなりできない人間だったとしても、それをフォローしたり、指導して成長させるのが店長の役目だろうと思ったので、店長に大きな不信感を持った。

その後、店長は私を、仕事ができない人として扱うようになり、ゴミ捨てや両替など簡単な雑用や裏の業務を、ほかのスタッフより多めにやらせるようになった。その店長の言動は私より10歳以上年下の社員やバイトスタッフにも影響し、彼女たちまで私のことを見下すような態度を取るようになった。

そういうなかで働いていると、まわりの目が気になり、どんどん萎縮して働くようになり、いままでにないミスをすることもあった。すると、またできない人の烙印が押されていいく。悪循環だ。

店長に対しての不満もあったが、特に経験が豊富なわけでもない年下のスタッフに見下された言動をされることにもイライラが募った。仮にバイトの彼女たちに自分の意見を言ったとしても、結局は店長が彼女らの味方をするだろうと思うと、あまり言い返すこともできず、ストレスはたまっていった。

10人以下の小さい店舗なのにスタッフ感の和は乱れ、店をまとめるものとして失格だろうと、店長への不満は増すばかりだった。

主人公ツガワと私の相違点

パワハラは受けていたが、物語の主人公ツガワと違って救われていた点が二つある。

過去の体験から得た自信

主人公ツガワはX部長に「あんたなんか、よそじゃ絶対やってけないでしょうね」と言われたり、自分にパワハラをしてくるX部長と仲良くやっている人がいることを考えると、自分の能力や会社での適応力に自信が持てなくなってくる。そして、辞めたいけれど辞められない日々が続く。

以前の勤務先のことが書いてなかったので、ツガワは多分新卒なのだろうと思う。前の会社で普通に過ごせていたのなら、自分ができないせいで責められているのではないということがわかり、そんなに自信を失わずにすんだはずだ。

先にも書いたように、私はその前のお店では問題なく働いていた。もちろんまわりのみんなにフォローしてもらっていたとは思うが、ミスが多かったり、お客様を怒らせることが多かったりということはなかった。社員ともアルバイトの人たちともそれなりになかよくやっていた。

その経験があったおかげで、店長に仕事ができないと言われても流せたし、その点で自信を失うことはなかった。

話ができる仲間

ツガワには、社内に愚痴を言ったり、自分の味方になってくれる人がいない。これは相当辛いだろうと思う。

私の場合は店長と、店長を慕う若いスタッフには疎まれていた。しかし、同じ世代の数人のスタッフは私のことを認めてくれ、仲良くなることができた。

そのスタッフと休憩時間が一緒になったりすると、店長や若いスタッフに対する不満や考えなどを言い合ったりもでき、私だけが不満を持っているのではないこともわかり、かなりありがたかった。

パワハラのその後

自信を失うことなく、数人のスタッフとは交流を深めてもいた。しかし、店長や若いスタッフたちに自尊心を傷つけられることで、私の職場でのストレスは増えていった。

休みの日がとてつもなく嬉しく、仕事前日の夜は憂鬱で仕方なかった。なにか方法はないかとネットを検索したり、怒りをしずめる本などを読んでもみたが効果はなかった。

実際に出勤しても、それほどひどい叱責や嫌がらせを受けるわけではない。なのになんでこんなに仕事に行くのがイヤなんだろうと考えていて、気づいた。

これってウツのはじまりなんじゃないかと。

いまは、自分でそのことが認識できているからいいけれど、気づかずにこのまま仕事に行き続ければ、どこかで私がこわれるのかもしれないな、と思った。

上司との話し合い

あと1ヶ月は頑張ろう、と考えていた矢先、店長に「アールさんはこの店(この仕事、と言ったのかもしれない)に向いていないと、会社の上司に話したよ」と言われた。驚いたものの、それにより自分はクビになるのか、うまくいけば別のお店に移動できるのだろうか?などとかすかな希望を持ったりもした。

それから数日後、会社の上司と話し合いの機会があった。店長からの言葉を受けて、状況を聞かれた。私は、自分に大きな問題があるとは思えないし、前の店舗できちんと働いていたことを考慮してほしい、可能なら店を異動したいと言った。

しかし上司はすでに私に見切りをつけていたらしく「異動はできない。仕事を続ける気があるのなら、いまのお店でもう一度本気で働いてほしいけれど、どうする?」と言われた。

自分から辞めますと言ってほしい会社の意図がわかったが、どうするも何も、いまのお店でやることはやっているし、これ以上本気でと言われてもやりようがない。異動の希望が消えたのなら、いまの店舗に長く勤めていても自分が壊れるだけだ、と思ったので、辞めます、と答え2週間後くらいに退職した。

あまり状況を知ることもなく簡単に人を切る上層部と、結果的に私を退職に追い込んだ店長に大きな不満を感じたが、こんな会社にとどまっていてもしょうがないとも思えた。そして、いまもって辞めたことを一度も後悔していない。

仕事を辞めたあと

仕事を辞めて大きなストレスはなくなったものの、もやもやした感情は残り、私はヒントを求めてネットでいろいろ調べていた。そこで自分なりにたどりついた答えは、自分の気持ちをきちんと表現すればよかったということだった。

働いているとき、あっちもそうだったのだろうが、自分も店長と若いスタッフたちに対して見下した気持ちで接していた。しかし、私は揉めるのがイヤで、最後まで自分の気持ちや考えをきちんと表現しないでいた。

だけど辞めてから、言わなかったことを後悔しているし、言えなかった自分自信に対しても怒っていることに気づいた。

だから、仕事を辞めたあとも、退職に追い込んだ店長に対する怒りをときどき思い出しては恨み言のメールを送りつけようかと文章を頭の中で考えたりした。そのたびに、いやいや、いまごろそんなの送ってもしょうがない、と思い直してやめる。

そしてまた数週間すると思い出し、文章を考えては実行には移さず、の繰り返し。

とうとう、辞めてから3〜4ヶ月後に、短いメールを書き、思い切って送信した。内容は「あなたが私にやったことはパワハラです。店長の資格はありません。私もなにか意見を言えばよかったのかもしれません。返事は不要です」というような簡単なものだったと思う。

返信不要とは書いたものの、謝罪のメールがほしいような、でも実際に返事が来たらどうしよう、などと考えしばらくドキドキしていたが、結局なにも返ってはこなかった。

メールを送ってわかったこと

しかし、この短いメールを送ったことで、私のもやもやは驚くくらい晴れてスッキリした。自分の気持ちを伝えるということがこんなに大事なのか、とびっくりした。ただ、完全にもやもやがなくなったわけではない。店長には伝えられたが、若いスタッフたちには怒りの気持ちを伝えられていないからだ。

ただ、これはいまとなってはどうしようもない。当時から連絡先も知らないし、いまさら連絡先を調べて伝えるほどのことでもない。

経験から考えたこと

そのお店での経験は、その土地まで嫌いになるほど嫌な体験だった。でも、自分の考え方や行動を見直すきっかけになった。

私は揉めるのが面倒で、自分の考えを伝えずにいることが多かったが、その分、頭の中で相手を否定し、それが相手に伝わっていたのだろうと思う。

相手と異なる自分の意見を述べることは、相手を傷つけたりその人を否定することではないのに、私自身が混同していたように思う。

相手に言いたいことを言って傷つけるのも怖かったし、反論されて自分が傷つけられるのも怖かったのだ。本当はそうじゃないのに。

店長からすれば、反抗はしてこないが擦り寄っていくわけでもなく、何を考えているかわからないので、上から押さえつけるしかなかったのかもしれない。また、若いスタッフたちは、私が自分の意見をはっきり言わないことで、つけあがっていったようにも思う。

もちろん私が言いたいことを言っても、状況がよくなることはなかったかもしれないが、言わなくても悪い状況だったのだから、言っておけばよかったと思う。少なくとも私が言わなかったことを後悔することはなかった。

嫌われるんじゃないかとか、雰囲気が悪くなるんじゃないかとか、反論されたら怖いとか、いろいろ考えてしまい自分の気持ちを素直に伝えるのは難しい。思ったことを躊躇なく言える人が羨ましい。

でも、難しいけれど、最初は感情的になっても、不器用なやり方でも、少しずつできるようになりたいと思う。

退職後の仕事

このブログの「仕事」カテゴリーを以前に読んだ人ならわかると思うが、あいかわらず接客販売の仕事をしている(いまは無職だけど、2月からの仕事も決まってる)。

たしかに気が利かないところはあるし、臨機応変な対応も苦手だけれど、お客様に嘘は言わないし、無理にすすめることもしない。及第点はつけていいと自分では思っている。

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